2023年2月8日:Restaurant ASO
フランスに憧れ、メゾンに憧れた一人の
デザイナーが、「日本国内最後にする覚悟」
と語ったショーを行いました。
ランウェイは、
デザイナーが20代だった頃、「フランスって、
きっとこういう素敵な街なんだろうな」と、
思い描きながら、日々目の前を通り過ぎるだけ
だった、代官山のフレンチレストラン ASO。
そのランウェイを、
あの日の憧れを体現したように煌びやかな服を
身に纏ったモデル達が一人、また一人と、
フランスの街並みに見立てた店内を闊歩して、
彼の世界を紡ぎます。
『twinkle twinkle little star』
コレクションテーマでもあるきらきら星が
流れ、ブランドにとって新たなモチーフと
なった、星があしらわれた洋服達が輝きを
増していく中で、最後に安堵と達成感の
入り混じった笑顔を携えて、ランウェイを
歩くのはデザイナー 山岸慎平。
「着飾る」をテーマに、ブランドを構築、運営
してきた彼らは、安直に「ブーム」には迎合
せず、本質や真理をブランド独自のストーリー
として紡ぎ続けて13年。
その本質や真理は、かつて彼が憧れた地でも
評価されるものだったようです。
2023年6月25日:La Gaîté Lyrique
Semaine de la mode de Paris
/Paris Fashion Week/パリ・コレクション
ヴァージル・アブローがOff-White のデビュー
を飾ったその地に、初参加からオンスケジュー
ルを獲得した異例のブランドのデザイナーと
して、半年前と同じ、安堵と達成感の入り混じ
った笑顔を携えた彼の姿がありました。
『Last Morning』
最後の朝、変容する前、夜(夢)の後、
何かが始まる、次章が始まる、
その直前の(最後の)朝、
と彼が語ったコレクションで、
彼はBED j.w. FORDの次章を紡ぎ出し、
あの日憧れたあの場所で彼は星を掴み、
彼の憧れと夢は、最後の朝を迎えました。
 
2023年8月4日:BED j.w. FORD AOYAMA
そして、今日この日は、
ブランドの次章として、青山に旗艦店という
新しい星が輝いた日です。
この新しい星の輝いた日に、
カヌレを贈ります。
「私たちがカヌレを焼く理由はひとつ、
とても困難なものだからです。」
そう言って最高のカヌレを焼く
虎ノ門虓を率いる親友、佐藤慶が心を込めて
焼き上げてくれました。
月がモチーフである虓のカヌレに添えられた、
彼からの、この手紙を見るたびに、
サマセット・モームが「月と六ペンス」で
語った、「毎日、自己の嫌いなことを二つ
ずつ行うのは、魂のためによいことだ。」
という言葉が思い出されます。
フランス・ボルドーで生まれたこの菓子を
通じて、彼の料理を通じて、物事に誠実に
向き合う大切さをいつも学ばされています。
虓の佐藤慶と、
BED j.w. FORDの山岸慎平には、
根底に同じ哲学が流れていると思います。
迷ったら困難な道を行くこと、
誠実に事に向かうこと、
あの日の憧れを大切にすること、
心を込めること、
大切なものを大切にすること、
そしてそれを忘れないこと。
今日この日を、
こうして虓のカヌレと迎えられることを
嬉しく思います。
カヌレと同じくして、この日を迎えるために
添えたワインは、ボルドーの格付けワイン
Chateau Malescot St. Exupery 2010
星の王子様の作者である、
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの
曽祖父、ジャン・バプティスト・サン=
テグジュペリの名を冠し、
BED j.w. FORDが生まれた年の葡萄で
作られた、
BED j.w. FORDと同じだけの刻を過ごした
ワインです。
星の王子様は言います。
「きみのバラをかけがえのないものにした
のは、きみが、バラのために費やした時間
だったんだ」
彼らと同じだけの刻を過ごしたこのボルドー
ワインに、費やした時間への思いを込めて
添えました。
今までも、これからも、彼らは幾つもの
眠れぬ夜を超え、それと同じだけの星を
掴み、最後の朝を迎えながら、
「かけがえのないもの」を紡ぎます。
ですが、その「かけがえのないもの」を
大人は、見落としてしまいがちな生き物
です。
王子がボアを描いても「帽子」と言われてしま
ったように、大人は真実を見失いがちな生き物
だから。
「心で見なければものごとはよく見えないって
こと。 大切なことは目に見えないんだ」
そう語った王子のように、
目に見えないことを大切に、
象を飲み込んだボアを、帽子と呼ぶような
大人にならないように、
小さな王子と、その友人である我々が、
明日も幸せでありますように。
 
感謝を込めて。
INSTYLE GROUP
西村 豪庸